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CHP report – Jul「医療モデル・民間モデル」

2014.07.06 / CHP report

childrens hospiceこどものホスピスプロジェクトを進めていると、様々な立場の方からご意見をいただく機会に恵まれます。皆さん一様に、生命にリスクのある子どもとその家族を取り巻く、医療、福祉、教育、そして民間のあり方を、もう1歩先に進めるべき・・・という話をされます。それと同時に、課題には気付いているものの、既存の仕組みの中では取り組みがたいと感じられている様子も伺えます。

ここで私たちが使う言葉を整理しておくと、「子どもホスピスの活動」とは、医療、福祉、教育、民間など、個別の立場から、対象とする子どもと家族の暮らしに寄り添う全ての取り組みを指しています。故に、唯一これが「子どもホスピスの活動」です。と言うモノではありません。特に日本は創成期にあり、手本となるモデルを海外に求めている段階です。しかし、歴史や文化、政治や社会保証の制度が大きく異なる海外のモデルは、手本にはなるものの、必ずしも日本の社会構造に合致したモデルとは言えません。

では、日本における「子どもホスピスの活動」はどこまで進んでいるのかを見ると、医療モデルと民間モデルの模索が始まっていると言えます。

医療モデルとは小児緩和ケアを病院として充実させる取り組みです。これは子ども専用の緩和ケア病棟が極めて少ないという現状を変えるべく、医師や看護士の皆様によって真摯な取り組みが成されようとしています。人生の多くの時間を病院で過ごす子どもやご家族にとって、院内生活における様々な環境を整える事は、急ぐべき課題です。医療は医療として、どこまで子どもや家族に寄り添う事が可能なのか、これからも多くの病院が取り組むべきモデルの1つです。

一方、私たちのプロジェクトは民間モデルという位置づけです。医療モデルと同じく、生命にリスクのある子どもを対象としていますが、医療や福祉や教育を主な目的としているわけではありません。私たちは、対象とする子どもやご家族の暮らしに、親しい隣人として寄り添いながら、心から安心し、気兼ね無く集える、コミュニティーを生み出そうとする取り組みです。もちろん、医療、福祉、教育、に関わる多く人材が関与していますが、あくまでも安心して集う為の要素でしかありません。特に、建設予定のハウスでは、対象とする子どもやご家族が同じ様な境遇の家族と気軽に出逢えます。いつでも「お帰り~」と迎えてくれる良き隣人がいます。そして、日常の生活から1歩抜けだして、貴重なひと時を楽しむ為の場所となります。

大きな動きとしては、この2つの流れが目立つのですが、医療は医療として、民間は民間として、そして、福祉は福祉として、教育は教育として、各々が持つ役割から、対象とする子どもやご家族へより深くリーチする事が求められており、そのいずれの取り組みも「子どもホスピスの活動」と理解する事が今の日本では正しい認識と言えます。

もう少し掘り下げるならば、医療、福祉、教育において、最も特徴的な部分は「税金を使う」という点にあります。これは、対象とする子どもやご家族にとって、誰もが利用可能な画一したサービスの底を広げると言う大きな意味を持っているのです。

例えば、病院は長期入院を余儀なくされる子どもやご家族の入院環境を、より快適する事は今も可能です。福祉は医療器具を必要とする子どもを一時的にあずかれる施設を充実させ、対応しうる人材育成に取り組む事は今も可能です。学校は、サポートさえあれば学習する事が十分に可能な子どもの受け入れ体制を整備する事は今も可能です。これらは現状の制度内で十分に実現可能ですが、様々な事情により、予算執行の優先順位を変えられずにいます。是非、テストケースからでも良いので、多くの現場で取り組んでいただきたいと願っています。そして、医療、福祉、教育の制度では、どうしても届かない部分について、私たちの様な民間の善意によって運営が成されている団体が活躍すべき領域だと考えています。

今後はこの様な理解が進むにつれ、医療、福祉、教育、民間がミックスアップされたモデルも登場する事と思います。これは、英国でも各地域の現状に合った「多様な」子どもホスピスが運営されている事からも明らかです。しかし、届けるべき地域の現状と課題に合わせて「チューニングされている」と言う事実を見逃してはいけません。ともすれば、画一化されたモデルを展開しがちですが、地域の現状に合わせた展開こそがとても大切と言えるのです。

私たちは十分な時間をかけて、最終的に鶴見緑地公園と言う場所にハウスの建設をする事になりました。これは、民間が担うべきコミュニティーが不足している地域でもあります。近隣には、大阪市総合医療センターが機関病院として小児緩和ケアの充実に力を注いでいます。又、深い理解を有する福祉事業者が多く存在しています。公立の学校や大学においても、対象とする子どもの受け入れに取り組んでいます。この様に、皆さんがお住まいの地域は何が不足しており、医療、福祉、教育、民間、各々の領域がどこまで進んでいるのか、皆さんの目で確かめてみるのも素敵な取り組みかもしれません。

私たちは「ヘレン&ダグラスハウス」との交流を経て、子どもホスピスの活動のあり方を勉強させていただきました。その交流の中で、私たちが1番リスペクトしているのは「チルドレンズ・ファースト」という英国社会に流れる思想なのかもしれません。これは、私たちの取り組みに限らず、「まずは子どもたちなんだ!」と、胸を張って言える日本であって欲しいと言う願いでもあります。その実現のためにも、良い実践を丁寧に重ね、「私の地域でも取り組みたい!」と皆様に言っていただける様な、他地域でも展開可能な民間モデルの構築に取り組んでいこうと思っています。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
次回は建設予定のハウスがどんな場所になるのか書いてみたいと思います。@TAKABA

※CHPとはchildrens hospice project の略。一般社団法人こどものホスピスプロジェクトの通称として使用しています。