TSURUMI こどもホスピス TSURUMI こどもホスピス

HOME > CHP report – Feb「家族の時間が重なる場所に」

CHP report – Feb「家族の時間が重なる場所に」

2015.02.19 / CHP report注目記事

皆さんこんにちは!今回のレポートは、お子様の闘病体験を持つお母様からいただいた手記をご紹介させていただきます。文中には、こどものホスピスがこんな場所であって欲しい・・・そんな願いもお寄せいただきました。わたしと同じ気持のご家族がいる・・・それが嬉しくて、ひとり「うん、うん」と心熱く頷いてしまいました。

ご寄稿いただいたお母様は、入院中のお子様やそのきょうだいへ読み聞かせのボランティアをされています。ご主人も、子ども関連のボランティアに力を注がれています。お二人とも、とても素敵なやさしい空気をまとったご夫婦です。そんなお二人の空気も一緒に伝わるとても素敵な手記なので、是非お読み下さい。

「家族の時間が重なる場所に」

次女は小学校2年生。キッズプラザへ春の遠足に行って帰った日の午後でした。その日一気に初夏が花開き、その年初めての半袖のワンピースを着たのがとてもうれしそうだったのを、風や光や広場で遊ぶこども達の声も一緒に思い出すことが出来ます。単なる足の怪我のつもりで診察してもらった近所の整形外科から総合医療センターへ、何のこころの準備もないままに急性骨髄性白血病と診断され緊急入院となった日です。あれから約10年が過ぎました。

入院当初、高熱が1か月間下がらず本来の治療に入れない日が続いたものの、その後4回の化学療法で奇跡的に(私達家族にとっては奇跡以外の何ものでもなく)7か月の治療を終えて自宅に戻りました。今あらためて振り返ると、入院中も、退院してすぐの自宅での療養中も、その後なだらかに続く今日までの日々も、家族それぞれで異なる速さの時間の流れがあったように思えます。

4歳違いの姉は当時小学6年生でしたから、感染症予防のために小児病棟の鍵のかかった扉の中には入れませんでした。体調の良い時の面会は、ガラスの扉を挟んでゲーム機で通信しながら遊ぶのが最大の楽しみでした。勉強のためではなく、面会時間が終る9時までの居場所として、病院近くの学習塾で事情を説明して居残りをさせてもらっていたのはありがたいことでしたが、彼女にとってはどんな時間だったのだろうと想像する余裕はありませんでした。思い切り反抗してみたかったかもしれないなと思うこともありました。

主人は、子どものホスピスが最初の構想段階から、こうして現実に着工計画がスタートし、具体的なイメージが出来上がってくると、万感の思いが湧いてきて自然と涙があふれてしまうようです。あの時、主人の内側のこどもの部分を開いてくれたこども達、お別れをしなければならなかったこども達との出会いが、主人にその後の人生の意味に気づかせてくれました。

私は私で、まず小児病棟のこども達の明るさに圧倒されるところからスタートし、戸惑うことばかりの入院生活を同室の小学生、中学生のお姉ちゃんに食事のトレーの返し方から看護師さんの癖まで教えてもらって乗り切ったのでした。現在は小児病棟で絵本の読み聞かせのボランティアを続けているので、私の日常には入院しているこども達が現在進行形でつながっています。そして、その時間の長さのぶんだけ、ほんの少しだけ患者家族当事者の立場を離れてみることが出来るようになり、こどももお母さんも、守られているだけでなく一歩外へ足を踏み出してみようよ、と思えるようになりました。(それは入院中、闘病中のこどもとお母さんに限らず、あらゆるこどもとお母さんへのメッセージでもあるのですが。)あの頃の私にそう言って励ましてあげたいという気持ちです。

そして、「あんまり覚えていないなあ」と言いながら、私たちが忘れてしまっている入院中のエピソードを楽しげに語ってくれている本人は、最近になって「あの時(病気だと言われた時)はものすごく怒ってた!」と言うことがありました。私からすれば、「やっと」という思いでその言葉を聞きました。やっと自分自身の気持ちに自然に向き合うことができたことがうれしかったのです。

それぞれの、あの時の、あの気持ちを受け止める場所があったら、その思いをゆっくり育てる機会があったら、そばで話を聞いてくれる家族以外の誰かがいたら、いいえ、黙ってそばにいてくれる同じ立場の家族がいると気が付けたら、あるいは思い切り泣く場所があってそっと見ないふりをしてもらえたら、とにかくあそこがあるからと思えたら…。

ひとりひとりの時間の流れかたは速さも深さもその時々で違います。そして、どこかゴールがあっておしまいではなく、その後もずっとずっと変化しながら続いていきます。誰かの思いと時間に重なりながら。

こどものホスピスが、そんな風にたくさんの家族の思いと時間が追い付いたり、離れたり、重なったりする場所としてもうすぐ生まれることをドキドキしながら待っています。