The Rose:子どもホスピスに咲いたもの~TCH2018年度を振り返って

こんにちは。ゼネラルマネージャーの水谷 綾です。

登録メンバー数は80世帯(開設以後累計99世帯)になった3年目の2018年度。開設当初にエントリーし、病状が徐々に回復した子どもたちがいれば、病状が不安定で入退院を繰り返し幼稚園等に復帰がままならない子たちもいました。そして、病状がどんどん厳しくなる子どものエントリーもありました。

病期の違い、病状や病期の違い、年齢発達の違い…、そして、家族構成や地域における環境の違い。TCHでは、多様なニーズを抱えた子どもやご家族と向き合うことになります。

「子どもの発意や願い」「その子の関心」に中軸に、お友達と出会って、遊んで、自分のやりたいことを通じて子ども同士で何かを感じられるような時間を作っていく子どもホスピス。クラブをやったり、キャンプをしたり…。子どもトークもやってみました。学校とは違う、病院ではできないこと。でも、病気だからといって諦めるのではなく、病気で制限された中であっても実現できる経験や体験プログラムを実施しました。一人ひとりのメンバーが願うものは一つひとつ違うからこそ、TCHとメンバーとの間に(賛同に近いような)共鳴する何か、と、その子のために実現したい(意思のような)ものがあって初めて、子どもホスピスはその存在感を増すことができると感じた一年だったように思います。

ある女の子の願いをかなえたい―。その子のつぶやきから、アドベンチャーワールドさんにご協力をお願いし、子どもの願いをTCHで実現する!そんな奇跡に近い素敵な機会を実現することができました。

私たちはプログラムやイベントを考える時にこだわっていることがあります。病気の子どもに対し…と全般を捉えるというのではなく、「その子(ある特定の子)」のことをじっくり思い描きながら、その子の思いを中心にプログラムやイベントの企画を練っていくこと。一人の願いの実現を通じて、他の子の「やりたい」「好き!」という気持ちに何かを灯すことができるようにしたい…と。子ども自身がこの世界の喜びや感激を思いっきり表してくれるような企画になるよう、スタッフ同士が徹底的に話し合い思いを巡らせながら、様々な協力者に相談したり巻き込んだりしながら様々なプログラムを作りました。こういったイベントやプログラムは、病状が比較的安定しつつある状態の外に出やすくなった子たちの参加が中心になりますが、感染の恐れから集団の輪の中に入るのが難しい子たちに対しては、別枠の時間を作ったり、ハウス内の別部屋で体に無理をさせないように配慮して行ないました。

辛いことではありますが、治療が功を奏さず、亡くなっていく子どもたちもいます。子どもたちの輝きの瞬間を感じていただきたく、写真展2019では旅立っていった子たちの写真を飾らせていただきました。

病状が重くなっても、好きを見つけるたびに力強くなっていった子
「生きることは、食べること」と言って、自分らしい生を貫いた子
ホスピスをつるみっこと呼んで、中庭の草木にしっかり水やりをしてくれた子
マネージャーと一緒に「カルメン」を踊ってくれた子
ホスピスでは、お兄ちゃんとして妹たちと一緒に楽しんだ子
嫌な時は嫌な顔、楽しい時は大きな口を開けて気持ちを出そうとした子
大好きなワンちゃんを連れてきて、家族でわいわい過ごした子

そこにあるのは、キラキラした子どもたちの姿と家族の愛が満ち溢れている写真ばかり…。そんな彼らの笑顔の裏には、自分のことより、家族のことを心配している子どもがいました。ある子は、自ら楽しみを見つけ、希望を見出そうとしていました。そして、闘病という子どもの日常の中で、親御さんやごきょうだいは本人の楽しみを諦めずに寄り添い続けていました。個々の思いが重なりあったからこそ、子どもホスピスとしてできることがあったのだと思います。

先への希望や楽しみがないことは、子どもに大きな影響を及ぼします。どんなに大変な状況でも日々成長し、様々な事柄に興味や関心を示してくれる子どもたち。その子の好きなことや好奇心を喚起できれば、彼らはどんどん変化し想像を超える力強い姿を見せてくれました。私たちが本気の気持ちをもって向き合い応えようとすれば、子どもにちゃんと伝わり受け取ってくれるのだと…。この3年のホスピスケアの実践を進めてきた中で、私自身が確信するようになりました。

「この子にできることってもっとあるんじゃないか…」という思いや迷いを抱えながら、「どうやったら実現できるか」をとことん追求し続けること、それがTCHのパーソナルケアです。私たちのそんな想いと中核的な主題を受け入れ、ともに支えていただいた皆さまに感謝いたします。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

 
2019年5月14日
ゼネラルマネージャー 水谷 綾

 
※2018年度に登場した新しいチャリティメニュー「ちょきんDEぼきん」。次も温かい気持ちを持ち寄る機会になればいいな、と。また応援してください☆