【活動レポート】Meet upな、お泊り体験

こどもが大きなブランコに寝そべって微笑んでいる写真

🚙まずは「お出かけ」から

障害のある子どもがきょうだい家族と一緒に、安心して「お出かけ」するきっかけになるようなイベントとして、2021年から『Meet up』は始まりました。今では、40組以上のご家族が『Meet up』の仲間になって、なかには「センパイ」とお呼びできるくらいの方も、少しずつ増えてきています。

「お出かけ」の大変さが変わったわけではありませんが、重ねた経験の数だけ、ご家族の自信は大きくなっているように感じます。

家族3人でカラオケをしている写真

🏨「お泊りの練習がしたい」家族の声にこたえて

ある日、『Meet up』に来られた親御さんから、「遠出もしたいんだけど、外で泊まったことがないから…」との声が聞かれました。ホスピスには遊びに行けるようになったけど、次のステップとして、お泊まりができるようになれば、家族で行ける場所がもっと広がるのにな…と思いました。

そこでこの春から、新たなMeet upとして「体験お泊まり」を始めることにしました。

始める前に、ご家族にこれまでの宿泊経験についてお聞きしてみると、思った以上に経験したことがある方が多かったことと、「全く経験がないので、お泊まり練習をしたいです」と希望される方が、たくさんいらっしゃることがわかりました。

遠出のお泊まりは、物の準備だけではなく、体調を崩した時のことや、医療機器の手配など、様々な準備が必要になります。普段は訪問看護師さんや、何かあったらすぐに駆け付けてもらえる訪問医の先生や病院が近くにあるので、安心の生活範囲です。でも、お泊りはその生活範囲から離れる、小さな旅です。楽しむことが目的の旅も、おとなの心の準備の方が大事だったりします。だからこそ、「体験お泊り」ではご家族の心配事をお聞きして、一緒に考え準備段階から丁寧に伴走しています。

リゾートホテルのような充実したサービス、とまではいきませんが、「Meet upに参加する子どもたちに、お風呂屋さんの雰囲気を楽しんでもらいたい」と、牛乳石鹸株式会社の皆さんが、毎回特別にしつらえてくれたホスピスのお風呂と、ゆったりできるお部屋を用意してお迎えしています。

そうやって始まった「体験宿泊」も、月に1回ですが少しずつ経験してくださったお子さんとご家族が増え、嬉しい反応やお声をいただくようになりました。

こども2名がマイクを持って歌っている写真

🛀ご家族の声

「初めて子どもと一緒にお風呂に入りました!」

「いつも沐浴槽で入れるから、自分と一緒にお風呂に入ったことがなかったです」

「旅行に行った時も、お風呂は大変なので身体拭きだけにしていました」

宿泊されたご家族から、お風呂にまつわるこんな声を聞いて、ハッとしました。お風呂は、訪問看護やデイで入れてもらうので、家族で入る、お父さん、お母さんやきょうだいと入るお風呂は、決して当たり前ではなかったのだと。宿泊の前にご家族から「お風呂は家で入ってから行った方がいいですよね」と聞かれた意味がわかりました。今は聞かれる前に「お風呂はお手伝いするので、ぜひホスピスで入ってくださいね」とお伝えしています。

ホスピスのお風呂は、スタッフがほんのちょっとアドバイスしたり、お手伝いもするので、お母さんやお父さんと子どもが一緒に入ることができます。「あーー、こうすれば呼吸器でも入れますね」「大きなお風呂なら大丈夫ですね」と、親御さんが初めて、子どもと一緒に入るお風呂を心から喜んでくださっている瞬間に出会うことができて、胸がいっぱいになりました。

当たり前ですが、人工呼吸器がついていると安全第一が優先されます。「この子、お風呂はとても好きで…」と、親御さんから話しはよく聞きますが、お母さんやお父さんに抱っこされて、こんなに気持ちよさそうに、嬉しそうに一緒にお風呂につかっている子どもの姿を見ると、毎日当たり前にしていたこと、在宅生活の当たり前だと思っていたことのひとつひとつを、ガラガラとひっくり返してみたくなりました。

母と子でお風呂にはいっている写真
父と子でお風呂にはいっている写真

✨心地いいを感じて

ホスピスは木でできた大きなおうちです。もう開設から10年目になるのに、いまだに来た人は「木の香りがしますね〜」と言ってくれます。そんな木の香りがするおうちは、天井にも工夫がいっぱいあります。バギーに乗っている子たちの視線の先にも楽しみがあるように、お部屋の壁も天井もちょっと違う造りになっていて、ゆっくりホスピスで過ごすから見つけられる発見が、あちこちにあります。

おおやねの部屋や、みんなの部屋の天井はとっても高くて、天井で回るシーリングファン(大きな扇風機)は、ゴロンすると一番先に目に入ります。クルクル回るファンを見つけた子どもたちの目はきらりと光り、ワクワクしている気持ちが伝わってきます。

ホスピスにはたくさんのおもちゃや大きなブランコや楽器にゲーム、カラオケルームまであるので、きょうだいさんたちも寝る時間や食べる時間も惜しくなるほど、楽しんでくれています。

ホスピスの空間をゆっくり体験して、お泊まりの練習になればいいな、、、とそんな願いから始まったMeet upの「体験宿泊」ですが、毎回子どもたちやご家族の嬉しそうな様子を見るたびに、単なる体験ではなく、家族と過ごす時間の大事さやその価値を実感します。当たり前なんて何もない、お風呂ひとつ、家族で遊ぶ時間ひとつ、ゆっくり流れる時間を感じられるのもひとつ。ホスピスで過ごす時間のひとつひとつが、子どもたちやご家族にとって、長い旅路の安らぎのひとときになればと心から願っています。