まさか、こんな大きな会場でコンサートを開いてもらえるなんて、子どもたちが舞台に立てるなんて。2022年、ホスピスでのクリスマスコンサートの時には、想像もしていなかった夢が、4年後、現実になりました。

はじまりは、2022年のクリスマス
ホスピスの役割は、生命を脅かされる状況にある子どもたちの、その子の想いを大事に、その子の願いが叶えられるように、楽しみや希望が見つけられるように支えることです。
井上芳雄さんが、ホスピスを応援してくださっていることを知り、クリスマスにホスピスでコンサートを開いてくださることが決まったときは、夢じゃないかと思いました。ちょうどその時期、歌が大好きな男の子がホスピスを利用していました。ご家族と一日一日を大事に自宅で過ごされていた時期でしたので、ちょっと先に楽しみの日ができたらと、「井上芳雄さんっていう、ミュージカル俳優の方がホスピスのクリスマス会に来てくれるんですよ!楽しみにしててくださいね」とお伝えしていました。
当日は11組のご家族が参加され、そのなかに男の子とご家族もいらっしゃいました。男の子は、自分がリクエストした曲を歌ってくれている芳雄さんをじっと見ながら、手でリズムをとり、コンサートをとても楽しんでくれました。帰り際には、「ありがとうございました」と、男の子は声を出して言ってくれました。その日のコンサートは、私たちにとっても、ご家族にとっても、ずっと忘れられないものになりました。

コンサートをきっかけに、井上さんとホスピスとの距離は前よりも近くなり、「こんなことできたらいいな」「子どもたちもご家族も喜んでもらえるかな」といった、私たちの想いを共有させてもらえる仲間になってくれました。
そして、クリスマスコンサートから3年後、大阪でのムーラン・ルージュの公演のゲネプロにもご招待いただきました。
ホスピスのおうちのなかだけではなく、本物の舞台に立つ芳雄さんや平原さんや、俳優の皆さんの歌声を聴き、子どもたちからも、初めてのミュージカルに触れた驚きや感動と、この日をきっかけに音楽やミュージカルに興味を持ったという感想をたくさんもらいました。心を動かす体験が、子どもたちにとっては必要なのだと実感しました。
そして、10周年を迎えた今年、コンサートを聴くだけでなく、舞台に立って歌う機会までいただけることになりました!

つるみでのリハーサル
コンサートの準備は、1年以上前から動き始めていましたが、この1年はあっという間でした。芳雄さんから、子どもたちがNHKホールの舞台に立てるようにと考えてくださり、それに向けた準備が始まりました。
病状が定まらない子も多かったので、直前まで準備とやり取りを重ねてきました。NHKホールの舞台には「立ちたい!」という子、「その時にならないとわからない…」という子、「恥ずかしいからいい」という子、それぞれの子どもの気持ちを一番大事にしたいと思いました。そこで本番の10日前、ホスピスで舞台に立つ子どもたちのために、リハーサルをすることにしました。子どもたち自身の心の準備のため、当日をもっと楽しみにしてもらえるようにと、本番の舞台移動の流れを伝え、最後には「ケセラセラ」をみんなで練習しました。

難しい曲なのに、歌詞を覚えてきてくれた子、書き込みのある歌詞カードをもって来てくれた子、みんながドキドキしながらも、コンサートを楽しみにしてくれていることが伝わってきました。「せ~の」と、スタッフの掛け声とともに、歌い始めた子どもたちの声の力強さにびっくりし、緊張していたのはおとなの方だったことに気づきました。
ピアノの伴走をしてくれたボランティアスタッフも、「本番は聴きに行けないけど、少しでも協力できたら」とこの日のリハーサルのために「ケセラセラ」を猛練習してきてくれました。多くの人がコンサート当日の子どもたちの体験のために準備し、子どもたちの力を信じて見守ってくれていることがとても嬉しかったです。
コンサートの会場で
どんなに大きな悲しみや苦しみの中にあっても、希望はあり、心を振るわせる感動は生まれるのだと、コンサートを終えて今強く感じています。
コンサート後の子どもたちからは、「一生残しておきたい、忘れたくない」「最初の歌がすごくて泣きそうになった」と、たくさんの感想をもらいました。子どもたちやご家族だけでなく、その日会場にいた多くの方々が涙されていたとあとから聞きました。子どもたちにとって、会場を包む感動を大勢の皆さんと一緒に体験できたことが、かけがえのない時間になりました。歌が伝わる温度は、芳雄さんはもちろん、集まってくださった歌手の皆さん、おひとり、おひとりの気持ちと共に、子どもたちの心に温かく沁みていました。

子どもたちの舞台に立つことを考えてくださったみなさん、そのために、あらゆる方法を惜しみなく考えてくださったみなさん、どんなお願いにも、大丈夫ですよ、と優しく受けとめて、諦めずに方法を探ってくださったみなさん。決して無理と言わない芳雄さんの愛の深さと、もっとこうしましょう!と、私たち以上に、子どもたちとご家族のことを思ってくださったことに、これまで何度涙したことか。すべての皆さんのおかげで、この日のNHKホールが愛でいっぱいに包まれたことに、心から感謝申し上げます。
会場に足を運んでくださった皆さん、本当にありがとうございました。皆さんの温かな眼差しがあったから、舞台に立つことができた子どもたちがいました。安心してコンサートを楽しむことができたご家族がいました。そして、この日がどれほど尊いその子の体験となったか。ホスピスに来る子どもたちに関わる、すべての関係者を代表し、お礼と感謝を申し上げます!
芳雄さんと出会う前は、ケアとエンターテイメントの世界は、別世界だと思っていました。ですが、今回のコンサートを終えて改めて、別世界ではなかった!世界は同じで、いつも身近にあって心に寄り添ってくれるものなのだと気づきました。芳雄さんが最後に言ってくださった「僕はここにいます!」の声に、私たちと多くの子どもたちご家族、こどもホスピスを地元に作ろうと頑張っている仲間たちが励まされました。
私たちの夢を叶えてくださった芳雄さん。ご協力くださったクミコさん、平原さん、上白石さん、三浦さん、小林さん、中野さん、大貫さん、足立さん、寺尾さん、長﨑さん。素晴らしい歌と演奏と温かいお気持ちを、ありがとうございました。
サンライズプロモーション、グランアーツの皆さま、NHK大阪ホールの皆さま、そしてコンサートの開催に向けてご支援くださった皆さま、本当にありがとうございました。
会場に来てくださった皆さま、そしてオンラインで視聴くださったすべての皆さまに、心から御礼申し上げます。

