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「やりたい」が「できた!」に

同じ病気の子と出会えた!

友だちと遊ぶ。勉強する。家族で過ごす——。子どもやその家族が「病気だから」と諦めてきた日常の経験。TSURUMIこどもホスピスは、そんな「やりたい」ことに安心して取り組むための環境づくりをお手伝いしています。

「やりたい」が「できた!」に変わったエピソードを紹介していく本コーナー。今回は、重症心身障害のある子どものためのイベント「Meet up」に参加してくれた、こうきちゃんのお母さんと、ゆうきちゃんのお母さんに登場いただきました。イベントを通じて、利用者同士の交流も生まれています。

心地よい秋晴れの下で、重症心身障害のある子どもとその家族が集うイベント「Meet up」を開催。6組の家族が参加してくれました。バギーから降りてゆっくり過ごしたり、クリニクラウン(臨床道化師)と遊んだり、お母さん、お父さんのためのカフェで語らったり。それぞれに、家族同士やホスピススタッフ、ボランティアのみなさんとの交流を楽しみました。

お互いを理解し合えるコミュニティづくりを目指す「Meet up」。スタッフの市川(いちかわ)とともに、イベントを通して出会った、こうきちゃんのお母さんと、ゆうきちゃんのお母さんにお話を聞いてみました。

——今日は来てくれてありがとう! おふたりは2019年の「Meet up」ではじめて会ったんですよね。

こうきちゃんのお母さん(以下、こうき母):18トリソミー症候群の子だけを集めた水遊びの会で出会いました。あのとき、楽しかったなぁ。

ゆうきちゃんのお母さん(以下、ゆうき母):そうですね! 今まで同じ病気の子どもやその家族と交流できる機会はあまりなかったので、「どんな道具を使ってるの?」と質問し合ったり、親同士で悩みを打ち明けられる場所があるだけで、気持ちがとても楽になりました。健常児のママ友と語り合うときとは、違う安心感がありますね。

原っぱエリアで「マルシェ」
▲あそび創造広場では、「こどもホスピスマルシェ」を同時開催。ワークショップや打楽器の演奏、バルーンアートのパフォーマンスなどが行われ、地域の子どもたちで賑わいました

——やっぱり、同じ状況だからこそわかることもある。だから、理解し合えるコミュニティづくりも大切にしているんです。仲間ができているようで嬉しい! そんなおふたりが、こどもホスピスに来たきっかけは?

こうき母:子どもと同じ18トリソミー症候群の子のブログで、こどもホスピスの体験記を見たことがきっかけ。その後、誰でも参加できるイベントがあると聞き、思い切って参加しました。そのとき、中庭に大きなバルーンの滑り台があって「行ってみようかな、でも子どもと公園で遊んだこともないし、大丈夫かな……」とためらっていたところ、スタッフさんに「私たちが見守っているから、やってみよう!」と背中を押されて。はじめて一緒に滑ることができたんです。それがすごく嬉しくて、今後もここに遊びに来たい!と思うようになりました。

▲「Meet up」では、その子の親や兄弟姉妹が安心して過ごしたり、話したりできるような場づくりをしています

ゆうき母:私たちの場合は、当時、バギーに乗っている子どもが遊びに行ける場所がなかなか見つからなくて。安心して出かけられる場所を探しているうちに、こどもホスピスを見つけました。

——病気や障害のある子どもの親御さんに多いのですが、ゆうきちゃんのお母さんもなかなか外出するチャンスがなかったんですよね。

ゆうき母:そうそう。ここに来はじめたとき、1カ月に1回は入院していて、全然外出できていなかったんです。だから、こどもホスピスでは「お出かけにはこんなものが必要なんだ!」と学びの連続。思い返すと、外出の練習にもなっていたんだなぁ。

——こどもホスピスに通うことで何か変化ってありました?

ゆうき母:はじめての育児で、難病をもつ我が子をどう育てていくか、大きな不安を抱えていました。そんな状態で家にこもっていると、「この子は何で遊べるんだろう? 何に興味がある? どんなことができる? 何もできることがないから、何もしないほうがいい」みたいな気持ちになってしまっていた。ここに来てからも「これがしたい」と言えずにいたら、スタッフのみなさんが「水遊びしてみよう!」とか、いろんな提案をしてくれて。「あ、うちの子はこういうことが好きなんだ!」と発見があって、私はそれが嬉しかった。子どもの興味に気づくことができる。とってもありがたいことです。

▲バギーから降りて、スタッフ・青儀(右)と遊ぶゆうきちゃん

収録:2021年11月7日(日)TSURUMIこどもホスピスにて

取材・執筆:MUESUM

撮影:衣笠名津美